「AI」「ディープラーニング」「シンギュラリティ」……。 毎日ニュースで聞かない日はない言葉ですが、「結局、AIって何がすごいの?」「昔のAIと何が違うの?」と聞かれても、本書を読むことでその問いに自信を持って答えることができるようになります。
今回は、日本のAI研究の第一人者である松尾豊氏(東京大学大学院教授)による著書、『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』をご紹介します。
発売から時間が経っても読み継がれているこの「AIのバイブル」。なぜこれほど評価されているのか、その理由と本書の魅力を4つのポイントで解説します。
1. 「AIの歴史」を知ることで、現在地が見えてくる
AIには過去に2回のブームと、2回の冬の時代があったことをご存知でしょうか?
本書の素晴らしい点は、単なる技術解説ではなく、「人工知能の歴史物語」としても読めるところです。
- 第1次ブーム(推論・探索): パズルや迷路は解けるけれど、現実の問題は解けない。
- 第2次ブーム(知識表現): コンピュータに知識を詰め込もうとしたが、限界が訪れる。
- 第3次ブーム(機械学習・ディープラーニング): 現在。ビッグデータと計算機パワーの向上。
このように、先人たちが何に挑み、なぜ挫折したのかを知ることで、「なぜ今のAI(ディープラーニング)が画期的なのか」が立体的に理解できるようになります。
2. ディープラーニングの本質=「特徴量」の自己学習
本書の最大のハイライトは、ディープラーニング(深層学習)の定義です。著者はこの技術の凄さを一言でこう表現しています。
コンピュータが自ら「特徴量」を獲得する技術
これこそが、本書で最も重要なキーワードです。
「特徴量」とは?
例えば、コンピュータに「猫」を認識させたいとします。 これまでは、人間が手動で「猫とは、耳が尖っていて、ヒゲがあって、目が丸いもの」という特徴(特徴量)をプログラムに入力する必要がありました。しかし、これでは世界中のあらゆる猫をカバーすることは不可能です。
ディープラーニングは、大量の猫の画像を読み込むことで、コンピュータ自身が「猫らしさ(特徴)」を見つけ出します。 人間が教えなくても、AIが自分で「ここに注目すれば区別できる!」と気づくことができるようになった。これがAIの歴史を変えるブレイクスルーだったのです。
3. 専門用語を使わず、文系でもスルスル読める
「ディープラーニング」や「ニューラルネットワーク」と聞くと難しそうですが、この本には複雑な数式は出てきません。
難しい概念を、平易な言葉と巧みな比喩で解説してくれるため、「AIの基本」が驚くほど腹落ちします。エンジニアではないビジネスパーソンや、学生の方にこそ最初の一冊としておすすめです。
4. 「G検定」受験者の基礎固めに最適
AIの活用能力を問う資格試験「G検定(ジェネラリスト検定)」を受ける予定の方にとって、本書は必読書と言われています。
G検定では、最新の技術トレンドだけでなく、以下のような知識が問われます。
- AIの定義と歴史
- 第1次・第2次ブームの具体的な手法
- ディープラーニングが解決した「フレーム問題」や「シンボルグラウンディング問題」
これらの概念的・歴史的背景は、技術書を読むよりも本書を読んだ方が圧倒的に理解が早いです。「試験対策の前の基礎教養」として読んでおくと、学習効率がグッと上がります。私自身、ハノイの塔という問題も本書を通して知りました。
まとめ:AIと共存する未来のために
本書のタイトルにある「人工知能は人間を超えるか」という問いに対し、著者は冷静かつ希望を持って未来を描いています。
AIを「怖いもの」「仕事を奪うもの」として遠ざけるのではなく、「道具としてどう使いこなすか」を考えるための視座を与えてくれる良書です。
【こんな人におすすめ】
- AIのニュースを表面的でなく、本質的に理解したい人
- 「特徴量」という言葉の意味を、自分の言葉で説明できるようになりたい人
- G検定の受験を考えている人