「保険って結局、損する仕組みでしょ?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?確かに数学的に考えれば、保険会社が利益を出している以上、私たち加入者は統計的には「損している」はずです。それなのに、なぜ多くの人が保険に加入するのでしょうか。
今回は、保険加入の合理性について考えてみます。
保険は本当に「損する賭け」なのか?
まず基本的な事実を確認しましょう。保険会社は慈善事業ではありません。保険料収入から保険金支払いと運営費を差し引いて、利益を出す必要があります。つまり、全体で見れば加入者が支払う保険料の総額は、受け取る保険金の総額を上回ります。
期待値だけで考えれば、確かに保険は「損する賭け」と言えるでしょう。
それでも保険に価値がある理由
リスクの性質を理解する
しかし、すべてのリスクが同じではありません。リスクは下記のように分類できます:
- 高頻度・低損失リスク:毎月の小さな出費、軽微な故障など
- 低頻度・高損失リスク:重大な病気、事故、自然災害など
保険が最も威力を発揮するのは、後者の「低頻度・高損失リスク」です。
具体例で見る保険の効果
ケース1:若い夫婦(子供2人、住宅ローンあり)
- 夫が家計の主要収入源
- 夫に万が一のことがあると、妻と子供の生活が困窮
- 住宅ローンの返済も困難に
- →生命保険と団信で経済的リスクを軽減
ケース2:独身(十分な貯蓄あり)
- 扶養家族なし
- 緊急時も貯蓄で対応可能
- →高額な生命保険は不要
ケース3:子供が独立した高齢夫婦(資産十分)
- 経済的な責任が軽減
- 自己資金でリスクに対応可能
- →保険の必要性は低下
保険の本質:「確実性」を買う商品
保険の真の価値は、金銭的なリターンではなく「確実性」にあります。
心理的な安心感
「もしもの時」への不安を軽減し、日常生活を安心して送れる心理的価値は、金銭では測りにくいものです。
家計の安定化
突発的な大きな出費を避け、家計を安定させる効果があります。毎月の保険料は予算に組み込めますが、突然の高額医療費は家計を破綻させる可能性があります。
機会コストの観点
大きなリスクに備えて多額の現金を待機させるより、保険でリスクをカバーして資金を他の投資や消費に回せる利点もあります。
賢い保険の選び方
保険が有効なケース
- 発生確率は低いが、発生すると経済的打撃が大きい
- 自己資金では対応困難な規模の損失
- 家族など、他者への経済的責任がある
保険が不要なケース
- 十分な資産があり、自己保険で対応可能
- 損失が発生しても経済的影響が限定的
- 他の保険(団信など)で既にカバー済み
まとめ:期待値を超えた価値がある
保険は確かに期待値的には「損する商品」かもしれません。しかし、私たちが保険に求めているのは期待値の最大化ではなく、「リスクの軽減」と「安心感」です。
適切な保険選択とは、自分の経済状況、家族構成、リスク許容度を総合的に考慮して、本当に必要な保障だけを適正な価格で購入することです。
「保険は損」と割り切るのではなく、「確実性という価値を適正価格で購入している」と考えれば、保険の経済的合理性が見えてくるのではないでしょうか。