9歳で父を亡くし、極貧から這い上がった男。
日本初の林学博士となり、日比谷公園や明治神宮の森を設計し、「日本の公園の父」と呼ばれました。そして独自の貯蓄法で巨万の富を築きながら、退官時にその全財産を社会に寄付しました。
その名は、本多静六（1866-1952）。
生涯で376冊もの著作を残した本多静六の言葉を参考にすることで、現代を生きる私たちが今すぐ実践できる人生哲学と財産形成の知恵を知ることができます。
本多静六とは？
埼玉県久喜市の農家に生まれた本多静六は、9歳で父を失い、貧困のどん底を経験します。しかし苦学の末、東京山林学校（現・東京大学農学部）に進学し、さらにドイツ留学を経て、1899年に日本初の林学博士となりました。
東京帝国大学教授として、日本の造園学・造林学の基礎を築き、
- 日比谷公園（日本初の近代的洋風公園）
- 明治神宮の森（100年後を見据えた壮大な造林計画）
- 全国300カ所以上の公園・庭園設計
といった今も存在する数多くの公園、庭園の設計に関わっていました。
さらに、助教授時代から実践した「4分の1天引き貯蓄法」で築いた財産を、定年退官時にほぼ全額、教育・公共機関に寄付した人物です。
1. 「人生即努力、努力即幸福」
努力そのものが幸福である
多くの人は「成功したら幸せになれる」と考えます。しかし本多静六は違いました。
努力するプロセスそのものが幸福だ、と彼は断言します。
極貧から日本の林学の第一人者へ。その道のりは決して平坦ではありませんでした。しかし彼にとって、学び、働き、成長し続けることこそが人生の喜びだったのです。
自分が今、何かに向かって努力をしているか？ もしそうなら、その努力の時間こそが、すでに幸福なのかもしれません。
2. 「人生の最大の幸福は、その職業の道楽化にある」
仕事を趣味にする唯一の方法
「月曜日が憂鬱だ」「仕事が楽しくない」
そんな悩みを抱える現代人に、本多静六はこう答えます。
「職業を道楽化する方法は一つ、努力（勉強）にある」
彼は造園学を極めるために、休日も現場に足を運び、海外の最新理論を学び続けました。その結果、仕事は苦痛ではなく、生きがいそのものになったのです。
実践のヒント： 今の仕事に関連する本を月1冊読む、業界の第一人者をフォローする、週末に関連スキルを1つ学ぶ。小さな学びの積み重ねが、仕事を「道楽」に変えていきます。
3. 「人生の幸福は、現在の生活程度より、その方向が上り坂か下り坂かで決まる」
今の状態ではなく、向かう方向が重要
年収300万円でも、毎年10万円ずつ収入が増えている人。 年収1000万円でも、毎年100万円ずつ減っている人。
どちらが幸せでしょうか？
本多静六によれば、答えは明白です。人間は絶対的な豊かさではなく、成長の実感で幸福を感じる生き物なのです。
自分への質問： あなたの人生は、去年より良くなっていますか？ 小さくても確実に前進していますか？
4. 「金は雪だるまのようなもの。初めは小さな玉でも、あとは面白いように大きくなる」
複利の魔法を味方につけろ
これは投資の世界で「複利効果」と呼ばれる現象を、見事に表現した名言です。
本多静六自身、月給の4分の1という小さな金額から貯蓄を始めました。しかし、それを投資に回し続けた結果、退官時には現在の価値で数十億円とも言われる資産を築いたのです。
具体例：
- 月3万円を年利5%で30年間運用 → 約2,500万円
- 月5万円を年利5%で30年間運用 → 約4,160万円
重要なのは金額の大きさではなく、今すぐ始めること、そして続けること。
5. 「収入の4分の1を天引き貯金せよ。残り4分の3で、いっそう苦しい生活を押し通せ」
伝説の「4分の1貯蓄法」
これが本多静六を億万長者にした、実践的メソッドです。
ポイントは「収入が入ったら、容赦なくまず4分の1を貯金する」こと。生活費が足りなくなるのではないか、という不安は誰もが感じます。
しかし本多静六は言います。「4分の3で、いっそう苦しい生活を覚悟の上で押し通すことである」
実際に始めてみると、人間は不思議なもので、その範囲内で生活できるように適応していきます。
すぐにできるアクション：
- 給料日に自動で4分の1（無理なら10分の1でも）を別口座に移す設定をする
- その口座には絶対に手をつけない
- 残りのお金だけで生活する工夫をする
6. 「40までは勤倹貯蓄、60までは専心究学」
人生を3つのフェーズに分けよ
本多静六は、人生を計画的に設計することの重要性を説きました。
- 40歳まで： 勤勉に働き、貯蓄に励む時期
- 60歳まで： 専門分野の研究に没頭する時期
- 60歳以降： 社会貢献に生きる時期
彼自身、60歳で東京帝国大学を退官後も、85歳まで執筆活動を続け、全財産を寄付しました。
現代版の解釈：
- 20-40代： スキル習得と資産形成の時期
- 40-60代： 専門性を深め、影響力を高める時期
- 60代以降： 次世代への知識継承と社会貢献の時期
7. 「人生の大事なことは、貧乏人と相談するな」
相談相手の選び方が人生を決める
この言葉は一見、冷たく聞こえるかもしれません。しかし本多静六が伝えたかったのは、こういうことです。
「貧乏人は貧乏をよく知っているから、貧乏になるような助言しかしない」
つまり、お金持ちになりたいなら、お金持ちに相談する。健康になりたいなら、健康な人に学ぶ。幸せになりたいなら、幸せな人の話を聞く。
これは単なる経済的な話ではなく、誰から学ぶかが、自分の未来を決めるという普遍的な真理です。
実践のヒント：
- SNSで成功している人、尊敬できる人をフォローする
- その人の著書を読む、講演を聞く
- 可能なら直接会って話を聞く機会を作る
本多静六から学ぶ、今日から始められる3つの習慣
① 収入の10%を先に貯蓄する
（4分の1が厳しければ、まず10%から）
② 毎日30分、専門分野の勉強をする
（仕事を「道楽化」するために）
③ 成功している人の言葉に触れる
（本、SNS、Podcastなど、何でもOK）
さいごに：「希望こそは人生の生命である」
「希望こそは人生の生命であり、それを失わぬ間は人間もムダには老いない」
本田静六自身、85歳まで精力的に執筆活動を続け、最後まで社会に貢献し続けました。
希望を持ち続けることが豊かな人生への道なのかもしれません。