私たちの人生において、何かを長く続けるという行為は特別な意味を持ちます。それは単なる忍耐や我慢ではなく、ある種の才能と言えるものかもしれません。「継続は力なり」という言葉がありますが、その「継続」自体が多くの人にとって難しいことです。
今回は山口周さんの「人生の経営戦略」を読んで気になった「根気よく続けられるという才能」と「これを知るものはこれを好む者に如かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず」というキーワード、格言について生成AIと壁打ちした内容をまとめました。
「根気よく続けられる」ことの本質
才能としての継続力
多くの人は「才能」と聞くと、生まれ持った特別な能力や天賦の才を想像します。音楽の才能、絵画の才能、数学の才能など。しかし、「根気よく続けられる」という能力もまた、一つの重要な才能なのではないでしょうか。
この「継続の才能」は、次のような特徴を持っています:
- 長期的な視点を持てる能力 - 目先の苦痛や困難を超えて、将来の成果を見据えられる
- 日々の小さな進歩に喜びを見出せる感性 - 大きな成功だけでなく、小さな成長にも満足できる
- 挫折から学び、立ち直る回復力 - 失敗を経験しても諦めずに再挑戦できる強さ
- 自己との対話を続けられる内省力 - 自分自身と向き合い、モチベーションを維持できる
これらの能力は、必ずしも生まれ持ったものではなく、意識的に育てることが可能です。つまり、「継続する才能」は開発可能な能力と考えられます。
継続を妨げる現代社会の要因
現代社会には、私たちの継続力を試す様々な要素があります:
- 情報過多と注意力の分散 - 常に新しい情報や刺激が押し寄せる環境
- 即時的な満足を求める文化 - すぐに結果を求め、待つことが難しい風潮
- SNSによる他者との比較 - 他人の成功ばかりが目に入り、自分の歩みが遅く感じる
- 多忙な生活リズム - 一つのことに集中して取り組む時間的余裕の欠如
このような環境の中で「継続する」ということは、以前よりも困難になっているかもしれません。普段何か作業をしていてもSNSが気になってついスマホを触ってしまうという人も多いのではないでしょうか?だからこそ、継続力は現代において特に価値ある才能と言えるのです。
「知る」から「好む」へ、そして「楽しむ」へ
「これを知るものはこれを好む者に如かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず」という格言は、物事への関わり方の深さを表現しています。この格言は人間の活動における三つの段階を示唆しています。
知ることの段階
何かを「知る」というのは、最初の入り口です。情報を得て、理解することから始まります。例えば:
- 料理のレシピを読んで理解する
- 楽器の演奏方法を学ぶ
- 新しい言語の文法を習得する
- プログラミング言語の構文を覚える
この段階では、知識は頭の中にありますが、まだ実践との結びつきは弱いかもしれません。「知っている」だけでは、深い満足や継続的なモチベーションは生まれにくいです。
好むことの段階
「好む」とは、知識だけでなく感情が伴ってくる段階です。ここでは:
- その活動に対して前向きな感情を持つ
- 自発的に時間を割きたいと思う
- 他の選択肢がある中でもそれを選ぶ
- その分野について更に学びたいという意欲が生まれる
「好む」段階になると、継続するためのエネルギーが生まれます。しかし、まだ外部からの評価や結果を気にしたり、比較したりする要素が残っているかもしれません。
楽しむことの段階
「楽しむ」段階は最も深い関わり方です:
- プロセス自体から喜びを得られる
- 外部からの評価に依存せず、内発的な満足を感じる
- 時間の経過を忘れるほど没頭できる(フロー状態)
- 困難さえも成長の機会として受け入れられる
この段階に達すると、継続することはもはや努力ではなく、自然な流れとなります。「続けなければならない」という意識よりも「続けたい」という願望が強くなるのです。
「知る→好む→楽しむ」の段階を経る実践例
音楽の例
- 知る段階:楽譜の読み方や基本的な演奏技術を学ぶ。練習は義務感から行う。
- 好む段階:少しずつ上達を感じ、音楽そのものに興味を持つ。特定のジャンルや曲に愛着が湧く。
- 楽しむ段階:演奏すること自体が喜びとなり、時間を忘れて没頭する。技術的な困難も挑戦として楽しめる。
料理の例
- 知る段階:レシピに従って調理法を学び、必要な材料や道具を知る。
- 好む段階:料理の世界に興味を持ち、新しいレシピに挑戦するのが楽しみになる。
- 楽しむ段階:レシピを離れて創造的に調理を楽しみ、失敗さえも学びの機会として楽しめる。
ブログ執筆の例
- 知る段階:文章の書き方、SEOの基本、プラットフォームの使い方を学ぶ。
- 好む段階:特定のテーマについて書くことに興味を持ち、反応があると嬉しくなる。
- 楽しむ段階:書くこと自体が自己表現となり、アクセス数よりも自分の思いを伝えることに喜びを見出す。
根気よく続けるための実践的アプローチ
「知る」から「好む」、そして「楽しむ」へと段階を進めながら、根気よく継続するためのヒントをいくつか紹介します。
1. 小さな一歩から始める
- 大きな目標は小さなステップに分割する
- 「5分だけやろう」という気軽な気持ちで始める
- 毎日続けられる最小限の行動を決める(ミニマムハビット)
大きすぎる目標は挫折のもとです。例えば「毎日3時間勉強する」より「毎日10分だけでも本を開く」という小さな習慣から始めましょう。
2. 「知る→好む→楽しむ」の段階を意識する
- 今自分がどの段階にいるのかを自覚する
- 「知る」段階なら、まずは基礎知識を丁寧に積み上げる
- 「好む」段階へ進むために、自分の興味ある側面を探索する
- 「楽しむ」段階を目指して、プロセスそのものに価値を見出す工夫をする
自分が今どの段階にいるのかを理解することで、適切な期待値を設定できます。「知る」段階なのに「楽しむ」段階の喜びを期待してしまうと、落胆するかもしれません。
3. 環境を整える
- 継続を助ける環境デザインを意識する
- 誘惑や中断要因を取り除く
- 同じ分野に取り組む仲間や共同体に参加する
- 進捗を可視化する仕組みを作る
例えば、スマートフォンの通知をオフにする、作業専用のスペースを設ける、進捗カレンダーを壁に貼るなど、環境を味方につける工夫が効果的です。また、自分で制限時間を決めて物理的にスマホを触れなくするように、タイムロックボックスを導入するというのも効果的です。
4. 自己対話の質を高める
- 自分自身との対話を大切にする
- 「なぜこれをしているのか」という本質的な問いを定期的に自分に投げかける
- 困難に直面したときの自己批判的な内的対話を察知し、建設的な対話に変換する
- 小さな進歩や成功を自ら認め、祝う習慣を持つ
私たちの頭の中の「自己対話」は継続する力に大きく影響します。「どうせ私には無理」という内的対話ではなく、「一歩ずつ進もう」という声を育てましょう。
5. 「楽しむ」段階への橋渡し
- 活動そのものの中に楽しみを見つける工夫をする
- 外部からの評価や結果だけに依存しない満足感を育てる
- 困難や挫折を成長の機会として受け入れる視点を持つ
- 日々の小さな進歩に喜びを見出す感覚を養う
例えば、ランニングを続けるなら、記録を更新することだけでなく、走っている時の風を感じる感覚や、体を動かす爽快感そのものを楽しむことを意識してみましょう。
継続の先にある「マスタリー(熟達)」
何かを「知り」、「好み」、「楽しむ」段階を経て長く続けると、やがて「マスタリー(熟達)」と呼ばれる状態に近づいていきます。
マスタリーの特徴
- 直感的な理解 - 論理的思考を超えた直感的な判断ができるようになる
- 創造性の開花 - 既存の枠を超えた新しい表現や方法を生み出せる
- 困難を楽しめる精神 - チャレンジそのものが喜びとなる
- 教えることの喜び - 自分の知識や経験を他者に伝えることに満足を見出す
マスタリーに至る道のりは長いですが、「楽しむ」段階に到達すれば、その道のりそのものが人生の喜びとなります。
継続の中で出会う「壁」とその乗り越え方
どんなに情熱を持って始めたことでも、必ず「壁」や「停滞期」と呼ばれる時期に遭遇します。これは継続の道のりにおいて避けられない、むしろ成長に必要なプロセスとも言えるでしょう。
一般的な「壁」のパターン
- 初心者の壁 - 最初の熱意が冷め、基礎練習の単調さに飽きてくる時期
- 中級者の停滞 - ある程度上達した後、急に成長が止まったように感じる時期
- 燃え尽き症候群 - 過度な努力の後に訪れる意欲の低下
- 外的環境の変化 - 仕事や生活環境の変化により継続が難しくなる時期
壁を乗り越えるためのアプローチ
初心者の壁を越える
- 基礎練習に小さな変化を加えて新鮮さを保つ
- 短期的な小目標を設定して達成感を得る
- 同じ段階の仲間と交流し、共に励まし合う
- 基礎の重要性を理解し、将来の応用との関連を学ぶ
例えば、語学学習なら単語の暗記という単調な作業も、フラッシュカードゲームにしたり、実際の会話の中で使ってみたりすることで楽しさを見出せます。
中級者の停滞を打破する
- 違った角度からアプローチを変えてみる
- 一度基本に立ち返り、基礎を見直す
- より熟達した人からフィードバックを受ける
- 自分の強みを活かした独自のスタイルを模索する
例えば、プログラミングで行き詰まったなら、別の言語や異なるプロジェクトに一時的に取り組んでみることで、新たな視点が得られることがあります。
燃え尽き症候群への対処
- 適切な休息とリフレッシュの時間を確保する
- 「すべきこと」から「したいこと」への意識転換
- 小さな喜びや楽しみを日常に取り入れる
- 自分の価値観に立ち返り、本当に大切なことを再確認する
無理をして続けるよりも、時には意図的に距離を置くことで、新たな情熱が生まれることもあります。
外的環境の変化への適応
- 新しい環境に合わせて継続の形を柔軟に変える
- 時間や場所の制約が変わっても続けられる最小限の形を見つける
- 変化をむしろ成長の機会と捉える視点を持つ
- 環境の変化に合わせた新しい目標を設定する
例えば、転職で忙しくなっても、通勤時間に勉強する、昼休みに少しだけ練習するなど、新しい日常に組み込める形を模索します。
「才能」としての継続力を育てる長期的視点
継続力を才能と捉えるなら、それは生まれ持ったものというよりも、長い時間をかけて育てていくものと考えられます。
継続力を育む土壌
- 自己理解の深化 - 自分の価値観や情熱の源泉を理解する
- 成長思考(Growth Mindset)の獲得 - 能力は努力で伸びると信じる姿勢
- 自己調整力の向上 - 感情や行動をコントロールする能力
- 回復力(レジリエンス)の強化 - 挫折から立ち直る精神的強さ
これらの要素は、特定の活動を継続する中で徐々に育まれていきます。
継続力が人生にもたらす変化
継続力を育むことは、特定の活動だけでなく、人生全体にポジティブな影響を与えます:
- 自己効力感の向上 - 「私にもできる」という自信の形成
- 長期的視点の獲得 - 目先の快楽よりも将来の充実を選べる判断力
- 深い満足感へのアクセス - 表面的な喜びを超えた充実感の経験
- 人生の意味や目的の発見 - 継続的な取り組みを通じた自己実現
継続力を育てることは、単に何かを長く続けるテクニックを身につけるということではなく、より豊かな人生を生きるための基盤を作ることなのです。
「知ること」「好むこと」「楽しむこと」の循環
「これを知るものはこれを好む者に如かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず」という言葉は、単線的な進歩だけでなく、循環的な深化も示唆しています。
深まりゆく循環のプロセス
- 楽しむことでさらに知識が深まる
- 新たな知識が好みをより洗練させる
- 洗練された好みが楽しみ方を変化させる
- 変化した楽しみ方がさらなる知識探求を促す
例えば、ワイン愛好家は最初にワインの基本知識を学び(知る)、特定の種類のワインに興味を持ち(好む)、やがてテイスティングの微妙な違いを味わう喜びを見出します(楽しむ)。そして、その楽しみがさらなる学習意欲を刺激し、より深い知識を得ることで、また新たな好みや楽しみ方が生まれるという循環が生じるのです。
循環がもたらす深い満足感
この循環が続くことで、単なる趣味や活動を超えた「生き方」としての深みが生まれます:
- アイデンティティの一部となる - 「〇〇をする人」としての自己認識
- 共同体への帰属感 - 同じ情熱を持つ人々とのつながり
- 時間を超えた対話 - 過去の達人や先人との精神的なつながり
- 表現としての喜び - 自分らしさを表現する手段の獲得
このような深い関わりは、単なる「暇つぶし」や「スキルアップ」を超えた、人生の意味や充実感の源泉となり得るのです。
現代社会における「続ける」ことの意味
変化の激しい現代社会において、何かを長く続けるということにはどのような意味があるのでしょうか。
テクノロジーと短期志向の時代に「続ける」ということ
- 希少性の増大 - 多くの人が短期的な満足を求める中で、継続力の価値は高まる
- 差別化の要素 - AI時代に人間らしさを示す一つの要素となる可能性
- 精神的安定の源 - 変化の激しい世界での心の拠り所となる
- 深い専門性の基盤 - 表面的な知識では対応できない複雑な問題への対応力
特に、AIや自動化が進む社会では、単なる知識やスキルよりも、長期間の取り組みから生まれる創造性や判断力が重要性を増していくでしょう。
デジタル時代の「続ける」ための新しい工夫
現代のテクノロジーは継続を妨げる要因にもなりますが、上手く活用すれば強力な味方にもなります:
- 習慣トラッキングアプリ - 継続の記録や可視化を支援
- オンラインコミュニティ - 場所を超えた仲間との励まし合い
- マイクロラーニング - 短時間で効果的に学べるコンテンツの活用
- リマインダーシステム - 定期的な行動喚起による継続支援
テクノロジーを敵ではなく味方にすることで、現代社会でも継続力を発揮できる環境を作ることができます。
さいごに:「続ける」ことの先にある本当の才能
「根気よく続けられる」という才能は、実は他のあらゆる才能の開花を支える土台となるものです。どんなに素晴らしい才能の種を持っていても、継続して育てなければ花開くことはありません。
同時に、「知る」から「好む」、そして「楽しむ」へと深化していく過程は、単なる技術の向上を超えた人間的成長をもたらします。物事を深く楽しめるようになるということは、人生そのものをより豊かに経験する能力を養うことでもあります。
「継続は力なり」という言葉がありますが、本当の意味での「継続の力」とは、単に長く続けることではなく、その過程で「知る→好む→楽しむ」という質的な変化を遂げることにあるのかもしれません。
そして最終的に、何かを本当に「楽しむ」ことができるようになったとき、それはもはや「続けなければならないもの」ではなく、「続けずにはいられないもの」、つまり人生に不可欠な一部となるのです。
子育て世代の私は、もしかすると子育てをしながら子供の成長を見守ることで、楽しむということを再認識できるのかもしれません。