持ち家があり、スーツを着て通勤し、子供を私立学校に通わせている。
外から見れば「成功したサラリーマン」そのものです。しかし、その実態は意外なほど厳しい家計のやりくりに追われる日々かもしれません。
今回は、現代日本で静かに進行する「見えない貧困化」について考えてみたいと思います。
教育費という重い十字架
中学から大学まで子供を私立に通わせると、一人当たり約1500万円の費用がかかります。これに下宿代などを加えれば、さらに負担は増大します。
地方ではまだ公教育に期待できる部分もありますが、東京・大阪などの大都市圏では状況が異なります。公教育の荒廃により、自分の子供をいじめや校内暴力、さらには深刻な問題行動から遠ざけるには、私立学校という選択肢しかないのが現実です。
実際、2024年の統計によると、幼稚園から高校まで全て私立で過ごした場合の総額は約1,840万円に上ります。大学費用を含めれば2000万円を超えることは珍しくありません。
サラリーマンの家計を数字で見る厳しい現実
大企業に勤める大卒男性サラリーマンの生涯年収を3億円と仮定して計算してみましょう。
生涯年収3億円の内訳
- 税金・年金・健康保険などの社会保障費:6000万円(20%)
- 住宅関連支出:7000万円
- 各種保険料:1000万円
- 残り:1億6000万円
ここから子供2人の教育費4000万円を差し引くと1億2000万円。老後資金3000万円を確保すると、実質可処分所得は9000万円となります。
これをサラリーマン人生40年で割ると、年間わずか225万円。月額に換算すれば約18万円程度です。
日常生活に現れる「貧困化」のサイン
年間200万円程度の実質可処分所得では、どのような生活になるのでしょうか。
- 長期連休の家族での帰省だけで家計が圧迫される
- 同僚との飲み会すら躊躇するようになる
- 外食や娯楽費を極限まで切り詰める必要がある
- 急な出費に対応できない不安が常につきまとう
表面的には「中産階級」の生活を維持していても、実際の家計は常に綱渡り状態。これが「見えない貧困化」の実態です。
構造的な問題として捉える必要性
この問題は個人の家計管理能力の問題ではありません。以下のような構造的要因が複合的に作用しています。
教育システムの問題
- 都市部における公教育への不信
- 私立学校への依存構造
- 教育費の高騰
社会保障制度の問題
- 重い税負担と社会保険料
- 将来への不安からくる過度な貯蓄志向
労働環境の問題
- 賃金上昇の停滞
- 長時間労働による機会費用の増大
まとめ:見た目と実態のギャップ
現代日本では、年収1000万円以上の世帯でも実質的には「貧困化」している可能性があります。これは統計上の貧困率には現れない、新しいタイプの社会問題です。
持ち家があり、子供を私立に通わせ、スーツを着て働く「成功したサラリーマン」の実態は、月18万円程度の可処分所得で生活をやりくりする厳しい現実かもしれません。
この「見えない貧困化」を解決するには、収入を増やすか、支出を減らすかでまずはできることから始めることが大切です。